組合員に脱退したいと言われたら(その2)
Q.事業協同組合の事務局長をしています。
最近、組合員から組合をやめたいとの話をよく聞くようになりました。脱退したくない、と思わせるような「魅力的な組合」にすることが重要だとは思いますが、事務局としては脱退に関する手続きについても一通り知っておきたいので、脱退に関する一連の手続きを教えてください。
A.さて、前回の回答から引き続き組合員の脱退について説明していきたいと思います。
前稿では脱退に関する理論的なお話をしましたので、本号では実務的なお話をしていきます。
なお、本稿では特に断りのない場合自由脱退を前提にしています。
(1) 決算における会計処理の方法
脱退者への持分の払戻は組合財産確定後に行われますが、脱退自体は事業年度末において効果が生じます。したがって、事業年度末の貸借対照表における出資金の金額は脱退者の出資金を控除する必要があります。
仕訳例 (出資金)×× / (未払金 (未払持分) ) ××
(2) 登記は4週間以内
出資の総口数と出資総額は登記事項ですので、原則、変更のつど登記をしなければいけません。しかし、それでは大変なので例外的に事業年度末日現在の出資の総口数と出資総額を事業年度末日の翌日から4週間以内に登記すればよいとされています。
(3) 事業報告と決算関係書類の作成
(ア) 事業報告書
少なくとも「組合の運営組織の状況に関する事項」における組合員の数および増減、組合員の出資口数および増減については、脱退者の状況に合わせ記載する必要があります。
その他、脱退により組合に大きな影響が発生する可能性がある場合には、適時事業報告書に記載し情報提供をする必要があります。
(イ) 貸借対照表
(1)記載の通り、出資金の金額が脱退者の分減少していることをご確認ください。
(ウ) 脱退者持分払戻計算書
法律上は「脱退者持分払戻計算書」についての規定はありませんが、中小企業団体中央会で公表しているひな型等を利用し、事業年度末時点での持分額の計算過程を提示することが望まれます。
日経株価は数年前に比べ大きく値を上げ、新聞では過去最高益との見出しが多く見られますが、一方で、中小企業でその恩恵を受けられる企業は限られています。苦境に立つ中小企業、その中では組合員の脱退というテーマは今後ますます重要になってくると思います。脱退したくない「魅力的な組合」を目指しつつ、脱退というリスクの管理も重要になっていくのではないしょうか。
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