税務の常識は世間の非常識

 世間の感覚と税務上の取扱いが、ズレていることを表した言葉です。一般的な感覚で何気ない行為をしたところ、実は課税されることが後日わかった――。税務の世界ではよくある話です。今回は、永年勤続表彰と創立記念について、よく寄せられる質問をQ&A形式でお届けします。


Q1.このたび、永年勤続表彰制度ができました。課税されることもあると聞きましたが、どんなところに注意すればいいですか?


A1.永年勤続した従業員等を表彰し、記念品を支給することは社会で一般的に行われていることから、①その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内で、②勤続年数がおおむね10年以上である人を対象にしており、③同じ人を2回以上表彰する場合には、前回の表彰からおおむね5年以上の間隔が空いていれば、給与として課税されません。


Q2.永年勤続表彰として、記念品ではなく、金銭を支給することも検討していますが、問題ないでしょうか?

A2.永年勤続者へ記念品ではなく、金銭を支給した場合には、その多寡にかかわらず、その全額が給与として課税されることとなります。なお、役員に対するものは定期同額給与以外の給与に該当し、損金不算入となります。


Q3.永年勤続表彰として、商品券を支給した場合にはどうなりますか?

A3.商品券は、換金性が高いことから実質的に金銭を支給したことと同様になりますので、その全額が給与として課税されます。


Q4.永年勤続表彰として、旅行券を支給した場合にはどうなりますか?

A4.旅行券は、一般的に有効期限もなく換金性もあることから、原則として給与として課税されます。ただし、①旅行券の支給から1年以内に旅行し、②その旅行が支給した旅行券からみて相当なものであり、③会社に旅行日・旅行先・旅行会社への支払額などを記載した旅行の報告書を提出し、④1年以内に使用しなかった部分を返還した場合には、給与として課税されません。


Q5.永年勤続表彰として、品物を自由に選べるカタログを支給した場合にはどうなりますか?


A5.永年勤続者への記念品は、①市場への売却性、換金性がなく、②選択性も乏しく、③その金額も多額となるものではないこと等、現金と異なる状況を勘案して、強いて課税をしないこととなっています。ご質問のように、自由に記念品を選択できるとすれば、それは支給された金銭でその品物を購入した場合と同様の効果をもたらすと考えられることから、非課税として扱われる永年勤続者の記念品には該当しません。


Q6.今年、創立30周年を迎えることとなりました。そこで、創立記念として記念品を配布する予定ですが、なにか注意することはありますか?


A6.創立記念で支給する記念品は、①支給する記念品が社会一般的にみて記念品としてふさわしいもので、②記念品の処分見込額による評価額が1万円以下であり、③創立記念のように一定期間ごとに行う行事で支給するものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであれば、給与として課税されません。なお、記念品以外の金銭や商品券、旅行券などを支給した場合については、永年勤続表彰のケースをご参照下さい。


Q7.創立記念パーティをホテルの一室を借りて開催します。従業員のほか取引先や金融関係者などを招きますが、会場費・飲食費が参加者一人あたり5,000円を超えてしまいました。これらの費用は損金不算入の対象となる交際費等に該当しますか?


A7.取引先などを招待して行う創立記念パーティは、取引関係者に対し取引関係を円滑にするための接待等の行為であることから、交際費等に該当します。このうち接待飲食費は、会場費や飲食費などをすべて含んだ合計額で考えます。したがって、参加者一人あたりの費用が5,000円を超えた場合には、その全額が交際費等に該当します。なお、交際費等は、期末資本金の額が1億円以下の法人は年800万円まで、それ以外の法人は接待飲食費であればその50%相当額まで損金の額に算入できます。


Q8.創立記念パーティで、招待客からお祝い金をいただきました。パーティにかかった費用からこのお祝い金としていただいた金額を控除し、交際費として処理してもいいでしょうか?


A8.ご質問の場合ですと、貴社が取引先を招待するという接待行為と、取引先が貴社にお祝い金を送るという交際行為が同時に行われたこととなります。つまり、それぞれがそれぞれのために交際費等を支出したと考えるのが相当で、その支出がなかったものとして扱うことは不相当だと考えられます。したがって、パーティにかかった費用の全額が交際費等となり、お祝い金は雑収入として計上することとなります。なお、予め参加費として収受している場合は、異なる取扱いをすることがあります。


Q9.当社は家族経営ですが、創立記念と称して慰安旅行に行くことになりました。会社の経費にしても差し支えありませんか?


A9.ご質問の場合の慰安旅行は、従業員の勤労意欲を高め、これをもって事業に資するためといった経済合理性に基づき主催したものとはいえず、単に家族関係を維持発展するために企画したものと考えられます。したがって、その旅行費用を会社が負担した場合には、給与として課税されることとなります。なお、役員である場合には、定期同額給与以外の給与に該当し、損金不算入になると考えられます。



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塚越税務会計事務所

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