それは10万円以上ですか?
備品消耗品を購入する際、会社の会計業務に携わっている方でこの言葉を聞いたことのない人はいないと思います。10万円という数字、これは法人税法や所得税法の償却資産に規定されているもので、本稿ではその会計処理と税務での留意点についてご紹介していきたいと思います。
1.償却資産とは・・・
事務所、工場などの建物、印刷機械、営業用の車両、ソフトウェアなどの資産は時間の経過によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。土地や骨董品などは「価値が減少しない資産」としてこれに含まれません。減価償却資産に該当する資産は取得にかかった金額を使用可能期間で分割して減価償却していきます。
ただし、取得した減価償却資産が次のいずれかでしたら、取得年度の損金に算入することができます。
・使用可能期間が1年未満(棚卸資産除く)
・10万円未満のもの
例えば応接セットの場合、テーブルと椅子が1組で取引されるものですから、1組で10万円未満になるかどうか判定します。
2.償却方法を選択
①原則的な取り扱いは・・・
10万円以上の減価償却資産を取得した場合、原則は法律で定めた耐用年数に応じた“償却方法”と“償却率”で減価償却していきます。
(a)償却方法
原則として“定額法”か“定率法”の2つの方法からの選択が認められています。この選択を届け出ない場合は税法が資産の種類ごとに定額法か定率法を決定します。
税法改正に伴い法人が平成28年4月以降に取得する建物、建物附属設備、構築物については選択できる償却方法が定額法に一本化されました。
償却方法 特 徴
定額法 償却額が原則毎年同額
定率法 償却額が初めの年ほど多く、年とともに減少する。
(b)償却率
財務省令に資産の構造用途と細目ごとに耐用年数と償却率が決められておりますので、ご確認下さい。
(c)では実際に15万円のコピー機(耐用年数5年)を購入した場合の償却額を定額法と定率法で比較してみたいと思います。
上記からも分かるように1年目、2年目の定率法の償却額が、定額法の償却額を上回っています。しかし、償却合計金額は最終的に定額法も定率法も一緒なので、費用化するスピードに違いが出てくるのです。
②一括償却資産
取得価額が10万円以上20万円未満の資産については3年間で償却する一括償却資産の損金算入を選択することができます。
(例)15万円のコピー機を購入した場合
償却額
1年目 50,000
2年目 50,000
3年目 50,000
③少額減価償却の特例
10万円以上30万円未満の資産については一定の要件のもと全額を損金に算入することができます。これを少額減価償却資産の特例といいます。ただし、取得価額の合計が300万円に達するまでが限度となります。また、青色申告を行っている資本金が1億円以下で従業員1,000人以下の中小企業等が対象となっています。
300万円に達するまでという限度はあるにせよ、全額を即時に償却することでき、法人税を圧縮するインパクトがかなり強いものとなっています。
3.消費税方式の違いによる取り扱い
減価償却資産の判定に際しては、消費税の取り扱いもチェックしなければなりません。
例えば取得価額が税込102,600円(税抜95,000円)の印刷機器は減価償却資産に計上しなければならないでしょうか?
この場合の判定は会社が適用している消費税の経理処理方式に依存することとされています。つまり、会社が税抜経理方式を適用している場合は、税抜価額が取得価額となり、税込経理方式を適用している場合は、税込価額が取得価額になります。なお免税事業者の経理方式は税込経理になります。
4.固定資産税(償却資産税)申告にも留意
資産を取得すると固定資産税がかかることがあります。償却資産の課税標準の合計が150万円未満の場合は固定資産税が免除されますが、原則10万円以上の償却資産を取得した場合、都税事務所や市役所等に申告することになります。
ここでポイントとなる点があります。②の“一括償却資産の損金算入”を選択した場合、“固定資産税”は申告対象外となります。一方で、③の“少額減価償却資産の特例”を選択した資産については、固定資産の申告対象資産となります。償却方法に違いはあれど、減価償却費として経費計上する金額は最終的に一緒なのに、法律の取り扱いの違いから固定資産税が課税されないといった違いがでてくるのです。
5.さいごに
上記で紹介した償却方法や特例を選択する場合には、事前の届出や申告で別表記載がもとめられますので、事前に専門家にご相談ください。
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